認知症患者さんのご家族の責任
この記事を書いたのは:戸田 裕三
高齢化社会になり認知症にかかられる方も増えてきました。
家族の方が自宅から外出中に、認知症の患者さんが外出して事件を起こした場合に、家族の方にはどのような責任が発生するのでしょうか。
この点で参考になるのが最高裁判所平成28年3月1日判決です。
事案は、91歳の認知症の男性Xさんが路線に立ち入り列車に衝突されて死亡されたというものです。
鉄道会社は同居の奥さんAと別居の息子さんBに対して監督義務違反を根拠として損害賠償請求の訴訟を提起しました。
最高裁判所は、A及びBは、法定監督義務者には該当しないとしました。
そして特別な事情があれば法定監督義務者でない者も法定監督義務者に準ずる者となるとしましたが、本件ではABともに準ずる者とは言えないと判断しています。
考慮要素として
- 親族関係の有無や濃淡
- 同居の有無や日常的な接触の程度
- 看護や介護の実態
- 当人の生活状況や心身の状況
などを総合考慮して特別な事情の有無を判断するとしています。
本件では、A自身が85歳で要介護1の認定を受けていること、息子の妻の補助を受けてXさんの介護を行っていたこと、Bは20年以上もXと別居しており、事故直前も1ケ月に3回程度X宅を訪問していたにすぎないこと、自宅にはセンサー付きチャイムが設置されていたが、電源が切られていたことなどが認定されていますので、これらのことを総合考慮して賠償義務を否定したものと思われます。
家族としては出来るだけのことをしていたと評価されたものと思われます。
この記事を書いたのは:
戸田 裕三