任意後見契約と死後事務委任契約
この記事を書いたのは:戸田 裕三
最近、高齢者のお一人暮らしの方が増えてきていますが、子供が遠方に住んでおり、自分が認知症等になった場合に身近な方がいない場合の対応や万一の時に誰に事務処理をしてもらうか予め誰かに頼んで準備しておきたいという方が増えてきているようです。
今回は、そのような問題と取り上げます。まず任意後見契約についてAさんと弁護士の会話を聞いてみましょう。
Aさん 私は一人で生活しているのですが自分が認知症になった後の生活の面倒を誰が見てくれるか心配なのですが
弁護士 そのようなご心配はよくわかります。任意後見契約をされてはどうでしょうか?
Aさん 任意後見契約とは何ですか
弁護士 自分が認知症になった後の財産管理等を好きな範囲で第三者に依頼する契約です。ご本人のお亡くなりになるまで財産管理等を行ってもらうわけです。
Aさん 財産管理等とはどんなことですか
弁護士 契約によって色々なことを指定できますが、預貯金の管理から毎月の支払や介護保険の申請等ですが必要な場合には施設に入所するための自宅の処分なども指定できます。契約で依頼内容を予め希望する範囲で決めておきます。
Aさん 法定後見とは主にどうちがうのでしょうか
弁護士 法定後見は財産の管理等をしてくれる後見人を家庭裁判所が決めることになります。したがって希望する方に後見人になってもらえるわけではありませんし事前に自分の希望する管理方法を伝えておくこともできません。なお任意後見人にはご本人が行った法律行為の取消権がありませんのでご本人が行った法律行為を任意後見人が取り消すことはできません。その他にもいくつか違う点がありますので詳しくは専門家にご相談ください。
Aさん そうすると契約を取り消す必要があるときは、法定後見の申し立てが必要になるわけですね
弁護士 そうなりますね
Aさん 任意後見契約は普通の契約書でもだいじょうぶですか
弁護士 法律の定めで公正証書で作成することになっています。
Aさん 任意後見契約を依頼する相手方は誰でもよいのでしょうか
弁護士 特に法律の定めはありませんので友人でも大丈夫ですが、お金の管理をすることになるので信頼できる方がよいでしょうね
Aさん 費用はどの程度かかるのでしょうか
弁護士 任意後見人を専門家に依頼するなら公正証書の作成費用の他に専門家に行ってもらう任意後見事務の多寡によって費用も変わってきますので依頼する専門家とよく相談してください。一般的には月3万円前後が多いようです。
さて次は次の死後事務委任契約についてAさんと弁護士の会話を聞いてみましょう。
Aさん 私は一人で生活しているのですが自分がなくなった後の葬儀や自宅の整理を誰がやってくれるか心配なのですが
弁護士 そのようなご心配はよくわかります。死後事務委任契約をされてはどうでしょうか?
Aさん 死後事務委任契約とは何ですか
弁護士 自分が死亡した後のことを第三者に依頼する契約です。
Aさん たとえばどんなことですか
弁護士 葬儀や納骨の問題から未払い金の清算や自宅の備品の処分やインターネット契約の解約なども入ります。
Aさん 遺言とはどうちがうのでしょうか
弁護士 遺言は財産の処分や名義変更ができますが死後事務委任契約ではできません。したがって死後に預金の引き出しなどはできませんので生前にお金を第三者に預けておいてそれで清算してもらうことになります。
Aさん そうすると遺言は別に必要なわけですね
弁護士 そうなりますね
Aさん 契約は普通の契約書でもだいじょうぶですか
弁護士 特に法律の定めはありませんが公正証書で作成することが多いようです
Aさん 死後事務委任契約を依頼する相手方は誰でもよいのでしょうか
弁護士 特に法律の定めはありませんので友人でも大丈夫ですが、前述のように生前にお金を預けることが多いので信頼できる方がよいでしょうね
Aさん 費用はどの程度かかるのでしょうか
弁護士 専門家に依頼するなら公正証書の作成費用の他に専門家に行ってもらう死後事務の多寡によって費用も変わってきますので依頼する専門家とよく相談してください。
この記事を書いたのは:
戸田 裕三