借金

破産しても支払わなければならない債務!?

この記事を書いたのは:清水 洋一

1 非免責債権とは

 破産手続廃止後,免責許可決定が確定すると,原則として,債務の支払義務が消滅します。しかし,社会政策的な観点から一定の請求権については免責が認められていません(破産法253条1項各号)。

 このように,破産者を免責することが相当でないと考えられる債権を「非免責債権」と呼びます。

 非免責債権は,あくまで免責が許されない例外的な債権であるため,以下の請求権に限定されています。

 それでは、内容を一つずつ確認していきたいと思います。

2 非免責債権の類型

租税等の請求権(1号)

→財団債権に属する租税を除く,破産債権に属する租税です。

関税や登録税などが、これに該当します。

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)

→「悪意」とは単なる故意では足りません。

不正に他人を害する意思ないし積極的な害意が必要とされています。 

破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(3号)

→重大な法益である「生命及び身体」の保護を厚くするため,生命又は身体に対する不法行為は,故意又は重過失の場合は免責されません。

軽過失の不法行為に限って免責されます。

夫婦間の協力及び扶助の義務,婚姻から生ずる費用の分担の義務,子の監護に関する義務,親族間の扶養義務,その他これらの義務に類する契約に基づく義務(4号)

→養育費,婚姻費用その他扶養に関する請求権は,生活維持に係る重要な給付であるため,免責されません。

既発生・未発生を問わず,養育費等の支払義務を免れることはできません。

雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権(5号)

→勤労者保護の観点から非免責債権とされています。

典型例は,使用人の給与債権です。

破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(6号)

→債権者名簿に記載されなかった破産債権者は,免責に対する意見申述の機会が与えられず,防御の機会を喪失してしまうため,非免責債権とされます。

ただし,債権者が破産手続開始決定を知っていた場合は,原則どおり免責されます。

罰金等の請求権(7号)

→罰金等は,破産者本人に経済的苦痛を与えることが目的であるため,その性質上,免責されません。

3 まとめ

 以上のとおり,破産法では,非免責債権が7つに分類されています。しかし,非免責債権に該当するか否かは,単純明快に確定できるものではありません。

 例えば,「租税」に該当するか(1号),「悪意」の不法行為に該当するか(2号),「重大な過失」の不法行為に該当するか(3号),不注意で債権者名簿へ記載しなかったとき(6号)など,判断が微妙な場合も数多くあります。

 専門的な知識が求められることがありますので,破産手続でお困りの方,お悩みの方は,ぜひ専門家にご相談ください。


この記事を書いたのは:
清水 洋一