婚姻費用の請求はお早めに!!
この記事を書いたのは:清水 洋一
1 婚姻費用とは
婚姻費用とは,夫婦によって構成される婚姻家族がその資産・収入・社会的地位等に応じた通常の社会生活を維持するために必要な費用です。
難解な定義ですが,簡単に言うと,婚姻費用とは「家族の生活費」のことです。
夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担すると規定されているため(民760条),夫婦の一方は他方に対し,生活費の支払を請求することができます。
たとえば,別居中の妻が夫に対し,自己の生活費及び監護している子の養育費を請求するような場合が典型例です。もちろん,同居中であっても生活費の支給がなければ,相手方に対して婚姻費用の分担を求めることができます。
2 婚姻費用の金額
実務では,婚姻費用の金額は,「標準算定方式」によるのが原則であり,標準算定方式の適用によって著しく不公平な結果が発生する例外的な場合に限って,これを修正する運用を為されています。
基本的には,
①夫婦双方の収入,
②子の人数・年齢によって,
ある程度,機械的に算出することができます。
いくら婚姻費用を貰うことができるか気になる方は,標準算定方式を図表化した「標準算定表」がインターネットで閲覧できるので,ぜひ試してみてください。
3 婚姻費用の始期
婚姻費用の始期については,明文の規定がなく解釈と運用に委ねられていますが,特別の事情がない限り,「請求時」とするのが実務の大勢です。「請求時」とは,裁判上の請求,すなわち,「調停・審判の申立時」を指します。
たとえば,2021年1月11日に別居開始,実家に帰省し,3か月経過した4月11日に婚姻費用分担の調停を申し立て,半年後の10月11日に審判(決着)となった場合,婚姻費用は,4月分からしか貰えません。1月11日から3月31日までの婚姻費用は,原則的に認められないという結論になります。
このため,婚姻費用のとりこぼしを防ぐためには,月を跨がないよう早めに調停を申し立てることが重要になってきます。
請求時以前に遡ったほうが,公平に適う特別な事情がある場合-別居時から婚姻費用を支払う合意があるとき等々-,婚姻費用の始期を別居時に遡ることは有り得ますが,あくまで例外的な取扱いに過ぎないので,注意が必要です。
相手方との離婚協議が長引き,その間の婚姻費用が消滅してしまったという悲惨な事態に陥らないよう,婚姻費用を請求したいときは,躊躇することなく,早めに調停・審判を申し立てるようにしてください。
4 おわりに
婚姻費用の分担は,離婚事件と関連することも多く,感情的に紛糾しやすく,面倒な処理が必要になることがままあります。
もし,婚姻費用で分からないこと,お困りのことがありましたら,まずは一宮事務所にお気軽にご相談ください。
こちらもご覧ください関連記事
この記事を書いたのは:
清水 洋一