相続・遺言

相続手続が未了のままではありませんか(相続手続を早く行うメリット)

この記事を書いたのは:戸田 裕三

 相続の手続きが長期間未了になっておられることはないでしょうか。相談者の方から「相続手続きをしなければいけない事は分かっていましたが、銀行に行く時間がなく放置したままになっていました」「兄弟と話し合う機会が無いまま時間が経過してしまった」というお話をお聞きすることがあります。

 両親の相続が長期間未了のままになっていたり、祖父母の相続が数十年間未了のままになっているケースもあります。このようなケースでは相続人が10人以上になっていることも珍しくありません。

 相続に際して遺言書が作成されている場合には、遺言執行者を選任して同人に遺言内容を実施してもらえばよいわけですが、遺言書が無い場合には、相続人全員が協議して遺産分割協議をする必要があります(一堂に会する必要まではありません)。

 相続人が一人であれば良いのですが、複数の相続人がいる場合には、全員が遺産分割に合意している書類が整っていないと土地の名義変更もできませんし、預金の解約引き出しも不可能となります。

 銀行に預金相続のための書類を貰いに行く時間が無いということで何年も相続がなされていないこともありますし、兄弟で話し合う時間が無いということで土地が親の名義のままで空き家になっていることもあります。

 最近は空き家問題も社会問題となってきていますので、相続人を決めて不動産業者に買主を探して貰う必要があります。相続開始から時間が経過すると空き家が老朽化してしまい売却が難しくなりますし、近隣の方から苦情が出る可能性もあります。

 また祖父母の相続手続きをしないままで子供の一人がなくなってしまうと孫が相続をすることになり、生きている叔父や叔母と相続交渉しなければならなくなってしまいます。

 孫では生前の両親が祖父母から援助を受けていたかどうかなども知らず、また証拠もないので叔父や叔母の言うままの相続になってしまう可能性も出てきます。

 したがって相続問題を次の世代に引き継がせることは絶対に避けた方が良いと思いますし、相続関係者が増えることによって協議が難航する可能性も増えてきます。

 したがって遺言書がない相続の場合には、早期に遺産相続に関して手続きを進めた方が良いでしょうが、平日に銀行に行く時間が無いということであれば弁護士等の専門家に依頼して(弁護士等への依頼は平日の夜や土日でも可能です)書類を取り寄せてもらい、自分に代わって兄弟と交渉してもらって兄弟の了承を取ってもらうこともできます。

 なお本年より相続登記の義務化も始まりますので(過去の相続も対象となります)、ぜひこの機会に相続手続きに着手することが重要と思われます。


この記事を書いたのは:
戸田 裕三